2018 PEPPERLAND TOPICS

主にペパーランドの年末ライブパンフレットに掲載した記事を転載しております。

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Group Exhibition「AllStars」

2018.1.13 ~ 2.10  at Gallery  Nomart(大阪)

大阪のGallery Nomartで取り扱う24名の現代美術作家の新作の小品を中心としたGroup Exhibition「AllStars」が開催された。国内外で高い評価を得るベテランから若手まで鋭い感性を持った作家の作品とともに能勢の新作「Telepathy Art」が展示された。作品1つ1つを光り輝く星に見立てギャラリー空間にちりばめるように展示することで、様々な表現領域の作品が1つの小宇宙を形成し、個々の作品のクオリティの高さはもちろん全体を通して新鮮な驚きを体験できる展示となった。
<出品作家>
木村秀樹|植松奎二|片山雅史|中川佳宣|中原浩大|伊庭靖子|今村源|名和晃平|
稲垣元則|田中朝子|豊富春菜|渡辺信子|藤本由紀夫|榎忠|永井英男|トーマス・ノイマン|能勢伊勢雄|松井智惠|池垣タダヒコ|東影智裕|張騰遠|金村仁|韮澤アスカ|黒宮菜菜
 

テレパシーの可能性   岡茂毅(Phenomena)

伊勢雄さんの新作が展示されるということで1月に大阪のGallery Nomartで開催されたGroup Exhibition『AllStars』を観に行ってきた。この展覧会は、Gallery Nomartが取り扱っている優れた現代美術作家24名の作品を新作の小品を中心に一堂に集めた豪華な展示になっていた。会場に入ると白い空間の中に絵画、版画などの平面なものから立体やオブジェ、映像まで様々な表現領域の作品が一体感を持って整然と並んでいて印象的だった。部屋の左側から順に作品を観て行き、ぐるりと部屋を一周した最後に伊勢雄さんの新作「Telepathy Art」が展示されていた。B2くらいのサイズのシルクスクリーン作品と小さなテーブルに置かれたファイルで構成された作品であったが、国内外で高い評価を得る尖った現代美術作家のしっかりとしたコンセプトを持った独特な表現の作品が並ぶ中にあっても一際異様な作品であったと思う。¶「Telepathy Art」は、コンセプチュアル・アートの先駆者であり世界的に高い評価を受ける松澤宥氏と伊勢雄さんが2001年に行ったテレパシーの実験が基になっている。作家の内面を直接鑑賞者に伝えるために「オブジェを消せ」で作品自体を排除した松澤氏が次なるブレークスルーを模索する中で、電話で問いかけられた伊勢雄さんが提案した「テレパシー」をやってみようということになったらしい。冗談ではなく真剣に「テレパシー」をやってみたということに凄みを感じる。伊勢雄さんがテレパシーを送り松澤氏が受信した内容をFAXで返信してくる。そのやり取りで生まれた26枚のFAXの画像を1枚の紙に並べシルクスクリーンで刷り上げたのが今回の作品である。置かれていたファイルには、FAXのコピーが一枚ずつ収められていた。¶FAXで送られてきた1枚1枚には不可思議な図形が描かれ、二十五次元などの次元を表す表記、そして異化と異化などの短い文章が添えられている。一つ一つ意味は分からないが何かすごく奇妙な感じがするものだった。そういうものが一つの画面上に並んでるのを見ていると自分が認識している世界とは異なる世界が確かにあって、その中を漂っているような気持ちがした。FAXの画像とは色が反転して黒い紙に白い線で刷られていたことがこの世のものならぬ異質さをより強く感じさせていたように思う。そしてFAXの送信のタイムスタンプが1枚1枚に付いてることで、今体験している奇妙な感覚の世界と僕らが実際に生活している世界とが確かに繋がっていることに気づかされ、ますます不思議な気持ちになった。本当に不思議としか言いようのない独特な体験だったと思う。¶自分がどこにいるのかあいまいでどこか夢見心地のような気分のまま電車に乗って帰ったのを覚えている。帰りながらテレパシーとは何だろうか?、そして受信したテレパシーを表現した松澤さんの図像と文章はどこから来たのか?ということを考えていた。あの不可思議な図像と文章は、松澤氏の中にあるものだが普段の思考や感覚の中では現れてはこずに、テレパシーを受けることで初めて呼び起こされてきたものではないだろうか。だからこそ日常的な感覚や思考では理解できず不可思議に感じてしまうのではないだろうか。古代日本人は、身近な事物の中に神の働きを感じながら生活をしていたが、近代的な感覚の中で育った僕らはそういうものを感じることはほとんどなくなった。神の働きを感じるというのもテレパシーの一種だったのかもしれないが、テレパシーも同じように近代人の生活の中で忘れさられてしまってるのではないだろうか。もし、テレパシーを発信し受信する感覚を取り戻すことが出来れば今回の松澤氏の図像や文章が少しは理解できるだろうか、その答えははっきりとは分からないが少なくとも僕らの思考や感覚は大きく変わり、僕らの知っている世界は大きく変わって感じられることは間違いないように思える。僕らの中にはまだ見たことのないものがたくさん眠っている。誰もがまだ未体験の表現の可能性をたくさん秘めている。テレパシーにはそれらを呼び起こす可能性があるのだと思う。テレパシーを信じることができれば知らないうちにひょっこりと現れてくるかもしれない。
 
 
 

(写真提供:Gallery Nomart)