2018 PEPPERLAND TOPICS

主にペパーランドの年末ライブパンフレットに掲載した記事を転載しております。

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夜間飛行

2018.1.26 LIVE  at 岡山PEPPERLAND

『ジャパニーズヒップホップのオリジネーター』と呼ばれ現在でも率先して活動するYOUTHEROCK★氏と氏と親交の深いZENLAROCK氏をゲストに迎え、岡山のヒップホップカルチャーを代表するラッパーやDJが集まりパーティーが行われた。伝説の"SLAMDUNK DISCO" "ブラックマンデー"と同様に2018年の最重要ヒップホップパーティーの『夜間飛行』となった。
 
 
 
 
 

伝説の一夜!!ジャパニーズヒップホップのオリジネーターによる夜間飛行!!!! 藤村綾佳(aaps Dr./PEPPERLAND staff)

今年が始まったばかりの1月26日。ペパーランドにジャパニーズヒップホップのオリジネーターであるYOUTHEROCK★氏と氏と現在も共に活動されているZENLAROCK氏を招き『夜間飛行』というタイトルでペパーランド出身ラッパー、マッシュ星川とパーティーを行いました。何故今私がこのようなパーティーを組んだかと言いますと、ペパーランドの主宰者である能勢伊勢雄氏が過去に様々なシーンでの最重要アーティストをペパーランドへ招いてきた事からでした。(昨年末のパンフレットでも紹介させて頂きました。)伊勢雄さんが日本のヒップホップシーンのオリジネーターであるECD氏を長年呼び続けていましたが病に倒れ願いが叶わず、共にシーンを作り上げたYOUTHEROCK★氏の名前が候補に上がりました。その話をしていた数ヶ月後に、岡山へライブをしにきていたZENLAROCK氏と縁ができ岡山で数日過ごしてた氏がペパーランドを訪れてくれたきっかけで、トントン拍子とはこの事なのか!というくらいの速さで今回のパーティーが決まりました。YOUTHEROCK★氏とZENLAROCK氏は、ラッパーとしての活動さながらシルクスクリーンのワークショップやDJ、アパレル等としても活動をなされていることから、岡山でストリートカルチャーを発信し続けているMARKERSTUDIOの南波さんの協力の元、何度もパーティーについてを考えながら当日まで3人で構成を練りました。それから2018年の始まりを迎えた1/24に、上記にも名前を載せましたECD氏の訃報を知らされました。(このパーティーの2日前でした。)そんな状況の中で始まった『夜間飛行』。YOUTHEROCK★氏とは、この日が始めてお会いする形で、新幹線の降り口で初対面をした時は、なんて気さくな方だ!と思いましたが、ふと氏と2人で夕食を共にした時に、やはり苦楽を共にしてきたマイメンの訃報を正気で受け止めれなかった様子で、時折涙を浮かべてたのを見逃すわけにはいきませんでした。そんな中で「本当はECDをペパーランドへ呼びたかったんだろ?それが叶わなかった。そこで今日という日にお前は俺を呼んだんだ。それは決まっていた事なんだ。だから今日は俺の思いを全てペパーランドのステージに落としてやるからよく見ておけ。」とビールを片手に言った。そして22:00よりDJがスタートしトップバッターのMC HANABISがマイクを握り「俺がラッパーを初めて見たのが大学の学祭での雷(YOUTHEROCK★氏が参加していたグループ)。それがきっかけでラップを始めた。」と。そこから次々と岡山のストリートシーンを担うアーティストが各々の『ジャパニーズヒップホップ』についてをマイクから放ちながらカマしていくフロウ。オーディエンスもそれに食いつくように反応し、ゲストまで徐々に徐々に盛り上がりを魅せてくれました。遂にゲストであるZENLAROCK氏のDJplayとともにYOUTHEROCK★氏が登場。そして最初に一言「ECD。今夜ECDをこのステージに呼び起こす...!」と。当日来ていたお客さんをはじめ出演者も私たちも全ての人間がその瞬間にロックオンされ、そして次々と披露される90's japanese hiphopクラシック達。それを更に奮い立たされるようなZENLAROCK氏による現行の日本語ラップ。真冬の夜に完全に灼熱となったステージとフロア。そして最後の曲に、今回のフライヤーデザインのモチーフとなった『族』カルチャーをフューチャーしたPVで話題となった両氏による『DOUBLE ROCK HEVEN』で〆られた。そこからYOUTHEROCK★氏の父親的存在と言われる90年代日本で数少なかったレコード2枚使いのHIPHOP DJであり現在岡山でbarいちぎんを営むkwazz"pump"yokoyama氏が『pump me up/trouble funk』の2枚使いplayも披露。ライブ後に盛り上がりまくったお客さんのダンスを止める事なく踊り続けさせていた。パーティーも大盛況で終わりを迎えた朝。YOUTHEROCK★氏に最後に喝を入れられた。「今日のパーティーは、お前にとって成功だったのか、そうじゃないのか。」もちろん「大成功です。」と答えた。本当は何が正解で不正解かは、わからなかったが「企画したお前が成功と思うならそれが成功の証だ。そしてこれが終わりではない。これからも生きているお前の夜間飛行を続けるんだ。」と言ってくれた。伊勢雄さんが続けるペパーランドに最重要アーティストを呼ぶ事。ECDの告別式も終わらない中そこにYOUTHEROCK★氏がきた事。90年代にまだHIPHOPなど知らない幼少期だった私がペパーランドに勤め、今回いろんな人の協力の元このパーティーを組めた事。色んな出来事がクロスオーバーし2018年の1月26日だったからこそ起こったこの『夜間飛行』というパーティーを一生忘れないであろう。¶今回出演してくれた岡山のMC(HANABIS,OWL,LA-MEN DOGG,KACHT BOMB CHOSS,PHANQ ROWLLERZ)とDJ(ゲストDJ『いちぎん』のマスターKWAZZ"PUMP"YOKOYAMA氏をはじめFLASH PISTON,JOE JAY,DJ cherry,RIGIA)と、各所でチケット取り扱いや宣伝に協力してくれましたBLOCK BASTA,trees,FortyFive,タバコマニア,KAMP,MARKER STUDIO,いちぎん,Moon&Spoonには、改めて感謝の意をここに述べたいと思います。本当にありがとうございました。
 

PEPPERLAND,NIIIIIGHT FRIGHHHHHHT!!!!!!! 重政淳志(マッシュ星川MC)

2018年1月26日、昨年の年末パンフでも紹介させていただいたパーティ、『夜間飛行』が行われました。昨年のパンフをご覧になった方もおられると思いますが、日本語でラップを始めた方達、特に90年代のジャパニーズ・ヒップホップのシーンの立役者となったような方達に、ペパーランドに出演してもらうというのは、能勢伊勢雄をはじめ、ペパーランドが長年待ち望んでいた事でした。90年代において、日本のヒップホップ・カルチャーは大きな躍進を見せています。日本語ラップという言葉ができるほどに、独自の言語体系やフロウ、押韻のスタイルが次々と確立され、また強烈な才能に溢れたプレイヤーがアンダーグラウンドからどんどん登場します。ジャパニーズ・ヒップホップのブームは、日本各地に熱を持って飛び火していき、東京以外の地域からも優れたプレイヤーがどんどん現れて来るという状況が生まれました。今や当たり前に多くの人が楽しんでいるヒップホップですが、それを日本で始めた人達の功績は、この先の未来でも語り継がれる事でしょう。そんな気持ちで企画させてもらった『夜間飛行』では、ジャパニーズ・ヒップホップのオリジネーターの1人であるYOU THE ROCK★氏と、氏と長年活動を共にされている、ZEN LA ROCK氏を迎えて開催する事が出来ました。そして、岡山市本町のBAR『いちぎん』の店長であり、日本のクラブカルチャーが始まった頃より活動をされている、DJ KWAZZ"PUMP"YOKOYAMA氏、HIGH LIFE RECORDSより、HANABIS,OWL,という2名のMCとDJでFLASH PISTON,JOE JAY,RIGIAの3名。他にもLA-MEN DOGG,KACHT BOMB CHOSS,PHANQ ROWLLERZ,DJ cherryと、岡山で活動しているDJ、MCにも多数出演してもらいました。この場を借りてお礼を申し上げます。また、改造バイクなどの族カルチャーをモチーフに、素晴らしいデザインのフライヤーを作って下さったMARKER STUDIOにも感謝の意を述べずにはおられません。そして、チケット取り扱いなどで協力して下さった、BLOCK BASTA,trees,FortyFive,タバコマニア,KAMP,MARKER STUDIO,いちぎん,Moon&Spoon、本当にありがとうございました。¶ここで現在に至るまでの、ペパーランドとヒップホップの関わりについて、いくつか述べさせてもらいます。2000年以降、ペパーランドではヒップホップや、それに関わりのある表現を紹介させてもらう機会が増えました。特にanticon周辺のオルタナティブなヒップホップや、WILD STYLE、STYLE WARSといった、オールドスクール・ヒップホップやグラフィティーの黎明期を捉えた作品を取り上げる事が多かったように思います。そして2005年には能勢伊勢雄プロデュースによる、『X-COLOR』が茨城県水戸市にて開催。これは国内初の、美術館でのグラフィティー・アートの展覧会です。会場となった水戸美術館に集まった作品は言わずもがな、水戸美術館周辺の街を埋め尽くすかのような、ライター達による強烈なグラフィティーの数々に圧倒されました。また、水戸のクラブではX-COLOR開催に合わせて、MSC、韻踏合組合、SDジャンクスタ、ランチタイム・スピークスなど、大変豪華な顔ぶれでのイベントが行われました(その翌日に水戸美術館で行われた、ライブショーケースには、岡山から神闘歌も出演しています)。それから十数年の間に、ヒップホップのアーティストにペパーランドに出演していただく機会も増える中、ジャパニーズ・ヒップホップの礎を築いた方達にペパーに出演してもらいたい、という気持ちが年々強まっていったのは昨年の年末パンフで書かれていた通りです。今回、ペパーランドのスタッフであり、aapsでの活躍もさることながらDJとしての活動も活発なAYAKAの尽力で、YOU THE ROCK★氏、ZEN LA ROCK氏のライブが決まった時は、「こんな日が来るのを待ってたぜ(©さんピンキャンプ)」という、有名なパンチラインを噛みしめる思いでありました。2018年が明け、寒さがどんどん増して行く中、昨年より闘病を続けられていたラッパー・ECD氏の訃報が届きました。『夜間飛行』の二日前でした。ジャパニーズ・ヒップホップのターニングポイントとなった96年の野外パーティ、『さんピンCAMP』を企画し、メジャー・インディー共に沢山の名作をリリースしてきたECD氏。日本のヒップホップを語る上で欠かせない存在であり、2000年代以降の活動では、ヒップホップの枠を越えて幅広い層に支持されました。ECD氏が召されたニュースに、多くの人が哀悼の意をSNSなどで述べられる中、『夜間飛行』の日を迎えました。折しも、この冬一番ぐらいの寒波が岡山の街を覆い、雪が舞う中、パーティが始まりました。寒い中駆けつけてくれたお客さんで溢れるフロアを徐々にDJが上げていき、ショーケースでは地元MC達の熱演に、フロアが沸き立っていくのがはっきりと感じられました。若手ながら安定したプレイで場を温めてくれたDJ cherry,長年のキャリアと絶え間無いレコードのdigでバッチリいい塩梅に揺らして下さったDJ JOE JAY,昭和歌謡と強烈なスクラッチの応酬で、フロアをロックオン!破壊力抜群のDJ FLASH PISTON,クロージングの余韻をいつまでも引き延ばしてくれるような、chillin'かつディープなプレイをしてくれたDJ RIGIA。ショーケース一番手からフロアを直撃、自身のMCとしてのルーツについて語るのも熱かったHANABIS,2MCの掛け合いと、フッドに根ざした世界観で変わらぬ魅力のPHANQ ROWLLERZ,最早黒人ブルーズ並にズブズブかつドープな世界まで到達したオリジナルスタイルを見せるOWL,新たに謎の覆面MC浮雲も登場し、ヘッズを大いにニヤニヤさせてくれるKACHT BOMB CHOSS,飛び抜けてハ〜イなテンションとスキル溢れるショーマンシップ、フロアからの「入れ墨いかついの〜」という野次も愛されてるがこそのLA-MEN DOGGにマジブチ上がりでした。そして遂にYOU THE ROCK★氏とZEN LA ROCK氏が登場!「今夜ここにECDを呼んでいるぜ!」とYOU THE ROCK★氏が叫んで始まったのが、『MASS対CORE』! ECDfeaturingYOU THE ROCK★,Twigyという95年の鬼クラシック!!「延々延々ユードントストップ・・・マス対コアならゲリラ戦 アンチJラップここに宣言!」ECDによる、あまりにも有名すぎるパンチラインを凄まじいテンションでラップするYOUさんと、この日最高に湧き上がるフロア。そしてYOUさんのバース「真っ赤な目をしたフクロウ俺登場!HEY!YO!here we go! ナイトフォース東京の いつものこの夜間飛行!」23年前にリリースされ、当時のジャパニーズ・ヒップホップの勢いと焦燥感を鮮烈に描いたこの曲が、フレッシュネスを保ったままオーディエンスをロックしていました。ZEN LA ROCK氏も、YOUさんをサポートしつつ、自身のアルバム『HEAVEN』から素晴らしい曲を連発。盛り上がりが最高潮に達したところで、両氏によるキラーチューン『DOUBLE ROCK HEAVEN』でライブ完了!!ですが、その後に続くKWAZZ"PUMP"YOKOYAMA氏のDJをサイドマイクでガンガン盛り上げるYOU THE ROCK★&ZEN LA ROCK両氏。卓越し過ぎてる二枚使いと、フロアの熱気を逃さぬ、太くしなやかなグルーヴに溢れたKWAZZさんのDJで、たくさんの人が楽しそうに踊ってくれてたのが忘れられません。1970年代のニューヨークで始まり、世界中に広がったヒップホップ。そしてそれを日本に伝わり、ヘッズやヒップホップジャンキーが爆発的に増えたのは、ECDやYOU THE ROCK★をはじめとする、90年代のオリジネーター達に依る影響が最も大きいのではないかと思います。『夜間飛行』では、日本のヒップホップ文化や歴史を体現する存在のYOUさんやZEN LAさんと、ペパーやこの街でヒップホップに携わる表現者が交差し合った、素晴らしく楽しいパーティになりました。皆様本当にありがとうございました!
 

終演後の記念撮影、左から
重政、YOUTHEROCK★氏、能勢、ZENLAROCK氏、藤村